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書評: 趣都の誕生 萌える都市アキハバラ
記事番号:2344
投稿者名:Gen Oishi (http://sowhat.magical.gr.jp/)
投稿日時:2003/05/07(水) 23:40:04
「映画は、予告がいちばん面白い。」
ふと、そんな台詞が脳裏をかすめる1冊でした。
朝日新聞の書評で、某氏が絶賛に近いことを言っていたのが読む気になったきっかけ。しか
し内容はというと・・・かなり稚拙。
序文を含め全体で6章構成になっているわけですが、実質的にオタク論を説いているのは
「序章 萌える都市」と「第5章 趣都の誕生」の部分のみ。最も冴えているのは『書名』だ
ったのだな、と思ってしまいます。
本を読み進めているうちに、どうにも第1章から第4章までが細切れで、何を主張したいの
かわかりませんでした。末尾に筆者の結論がごく簡単に述べられていますが、それにしても唐
突。あとがきを見て「なるほど」と思ったのは、それぞれの章は別々のものとして異なる時期
に発表されたものであったということ。そしてそれが「調査報告」として提出されたものであ
るということです。1冊の本にまとめるのであれば、練り上げて昇華させるべきところであっ
たのに、その労力を惜しんだように感じられてなりません。
どんなことがあったのか、という実態調査としてはそこそこ面白いです。そして、それらの
現象がどのように発生したのかについては、いちおうの解答を提示しています。しかし、考察
部分については、説得的とは言い難い。結論を避け、それなりの見解を示すに留まっているよ
うに思えます。
本書の性向を端的に示すのが、カバーを外したときに現れる“Learning from Akihabara”
という英題(表面にも書かれてはいるのだけれどね)。なるほど、この本は“Studies of
Akihabara”ではありません。例えて言うなら、『別〓宝島』のような。
著:森川嘉一郎 (2003年、幻冬舎)